TEACHER'S COLUMN

温泉資源を活用しながら正統性構築戦略をベースに大分県の魅力を向上させる

Lailani L. Alcantara 先生

国際経営学部 / 経営戦略とリーダーシップ分野

#経営戦略 #ミッションとビジョン

皆さんは、2018年に世界温泉サミットが別府で開催されたことをご存じですか。イギリスやフランス、中国、ベトナムなど計17ヵ国の政府関係者や研究者が参加し、APUの学部生たちが温泉についての研究を発表する機会もありました。経営戦略論からみると、このイベントは正当性構築戦略、すなわち大分県の特色を活かしたブランド構築戦略に基づくものとして開かれています。大分県は温泉の湧出量が日本で最も多く、地熱発電により再生可能エネルギーの自給率が高いことでも知られています。豊富な天然資源を生かし、持続可能な発展のできる社会の構築を目指すのが大分県のミッションでもあります。したがって温泉観光や持続可能なエネルギー開発について議論ができる温泉サミットの開催はそのミッションを果たすためのふさわしい取り組みだといえます。

こうした大分県ならではの資源を活用したブランド力や認知度の向上を目指す取り組みを通して、観光客は大分県の温泉の質と価値に、より一層関心を持つことになります。そして、草津温泉や箱根温泉など他県の温泉地と競争するために大分県の温泉施設のブランド力向上につなげるさらなる正当性構築戦略が必要不可欠になります。

ここで示したように、経営戦略論から学べることの一つが、ミッションと戦略の関係です。ミッションとは、何を達成するのかのこと、大分県では持続可能な発展のできる社会の構築です。そして戦略とは、そのミッションをどのようにすれば達成できるのか、のことです。温泉サミットによる正当性構築はその戦略の1つです。また経営戦略論では、その戦略の中で政府や事業体、消費者を含むさまざまな利害関係者がどのように影響し合うのかも学べます。

フィリピン出身。筑波大学にて経営学の博士号を取得。その後アメリカに渡り、ハーバード大学などで経営やリーダーシップに関する専門資格を取得。APUではインクルーシブ・リーダーシップ・センターの所長を務める。