TEACHER'S COLUMN

文化体験としての温泉観光をさまざまな産業が力を合わせて地域コミュニティから発信する

YOUN Seung Ho 先生

アジア太平洋学部 / 観光学分野

#観光学 #地域コミュニティ #コト消費

温泉は、今や外国人からも注目を集める観光資源です。外国人旅行者の意向調査では、新型コロナウイルス収束後の海外旅行先として日本の人気は高く、アジア居住者からはトップでした。また宿泊施設の中でも、旅館は訪日観光客から最も人気があります。その理由の一つが、体験型観光コンテンツへのニーズの高まりです。温泉に入浴し、浴衣に着替えて日本料理を食べ、伝統的な街並みが残る温泉街を散策する。そうした“コト消費”に惹かれる観光客が増えています。このような体験型のコンテンツを包括的に楽しめるのが、別府市などの温泉地です。

温泉地を観光として発信する上ではマーケティングの視点が必要ですが、単に数字として人数や売り上げを分析するだけではなく、満足度や感じ方を心理学的なアプローチから分析することも大切です。昨年ゼミの取り組みとして、鉄輪温泉の「地獄蒸し工房」を訪れた外国人観光客への調査を実施。蒸し料理を目的に行列ができるほど賑わっていますが、その長い待ち時間が負担になっていたり、蒸し料理を体験する時間の短さや注文システムの煩雑さに戸惑ったりという声がありました。こうした観光客の実際の反応を知ることで、より効果的な受け入れ体制や情報発信にもつながっていきます。

観光学は、特定の産業だけに関係するものではありません。製造業や農業、漁業など、どの産業でも打ち出し方を工夫すれば、観光資源として輝く余地は十分にあります。大切なのは、地元で暮らす人たちを中心に、そこで育まれた地域性をストーリーと共に発信することだと考えています。

韓国出身。オーストラリアクイーンズランド大学研究員や韓国京畿大学講師・研究員を経て2017年から現職。研究分野はコミュニティツーリズム、観光マーケティング、地域観光開発、観光コンテンツ開発など。