TEACHER'S COLUMN

温泉地を訪れる観光客と地域の住民を守るためにさまざまなリスクに備える

GOMEZ Oscar A. 先生

アジア太平洋学部 / 国際関係分野

#危機管理 #災害対策

温泉地などの観光業は、災害やパンデミックといった危機的状況に影響されやすく、長い期間に渡って被害を被ります。温泉地やそこで暮らす地域住民は、こうした状況に備えておくことが必要不可欠です。しかし災害やパンデミックへの対策は、観光分野において非常に難しい問題です。そもそも旅行の大きな目的は、慌ただしい日常から抜け出し、訪れた場所で楽しい思い出をつくることです。滅多に起こらない災害に注意することは、観光への関心を失わせることにもつながります。しかし、不測の事態に対する備えはなくてはならないものです。

過去にはスマトラ島沖地震によって大きな津波が発生し、大勢の観光客が孤立してしまいました。怪我の治療や交通手段の確保、帰国手続きなど、自治体が対応できる範囲を超えていたのです。また日本においては、東日本大震災の際に観光客が孤立する事態が起こりました。もちろん観光分野だけで対応できる範囲は限られていますが、災害時の安全確保や早期復旧には、事前の対策が必要です。

新型コロナウイルスの流行という世界的な危機に対しては、ウイルスへの恐怖から他人への差別意識が生み出されており、さらに慎重な対策が求められます。ただこうした状況は、温泉地にとってチャンスと捉えることもできます。大勢の人が集まる場所が避けられる中、温泉地は大都市圏よりも離れた場所にあることが多く、普段より観光客が増加しているケースもあります。グローバル化が進む中で、災害やパンデミックは全く他人事ではありません。温泉地で暮らす私たち自身が、危機的状況にどのように備えるべきなのか。改めて考えてみてはいかがでしょう。

コロンビア出身。コロンビア国立大学を卒業後、東北大学にて博士号を取得。日本国際協力機構(JICA)研究所の研究員として約5年間勤務。2018年より現職。研究分野はグローバル・人道的危機に重点を置いたガバナンスや安全保障。